退職勧奨とは?
退職勧奨とは従業員が自主的に退職するよう勧めることです。退職勧奨が行われれば、従業員側の同意を得て退職届を出してもらうよう伝えます。解雇に似ていますが、退職勧奨は解雇とどう違うのかなどについてご説明します。
解雇とは会社側が一方的に辞めさせることです。しかし、解雇手続きはそう簡単にはできません。解雇するには、従業員が会社の金を横領したなど解雇に値する合理的な理由が必要だからです。そのためハードルが非常に高いと言えます。
一方、退職勧奨は従業員側の同意を得てから退職届を出してもらう方法なので、比較的スムーズに進められます。この点が解雇と大きく異なります。
退職勧奨で辞める場合は、会社都合の退職として扱われます。そのため、従業員がハローワークに届け出れば失業保険をすぐに受け取れます。
自主都合の退職だと失業保険を一定期間受け取れないなど、従業員側に不利な点が多いです。一方、退職勧奨なら従業員側に有利に手続きを進められるので、その点を考慮してもらい退職を受け入れてもらうのが良いでしょう
どのようなケースなら退職勧奨として扱えるのでしょうか?具体的に、退職勧奨を検討するケースについて見ていきましょう。自社のケースも当てはまるかどうか、この項目を読んで判断してみてください。
会社が求めている能力に対して実力が伴わず、顧客からのクレームが多くあったり、管理職としての管理不足、営業成績の不良、ミスの多発などが起こっているケースが考えられます。
能力が不足しているだけなら、今後の従業員の努力次第で不足を補っていくことも可能でしょう。しかし、会社に不利益をもたらしているのに改善する気がないのであれば、十分退職勧奨を検討できるケースと言えます。
無断遅刻や欠勤を繰り返す、勤務時間内に居眠りをするなど、勤怠不良・勤務態度が悪いケースも退職勧奨の対象となります。
態度が悪い従業員がいると、その人だけの問題だけでなく、他の従業員にも悪影響を及ぼす場合もあります。「あいつはあんなに勤務態度が悪いのに辞めさせられないのなら、自分たちもサボろう」と考えてしまうこともあるでしょう。
このような従業員の存在は、会社にとって利益にならないばかりか不利益をもたらしかねません。
顧客や取引先を怒らせることが多い、社内で争いごとを起こすなど人間関係のトラブルを頻繁に起こすケースも対応を検討すべきです。
顧客や取引先に悪印象を持たれると、取引がスムーズに進まないばかりか取引自体なくなってしまう可能性すらあります。また社内で人間関係が悪化すると、仕事の効率も損なわれてしまいます。
その従業員と会社の信頼関係が破綻しており、良い関係を築けないケースでは、これ以上雇用関係を継続するメリットはないでしょう。最悪の場合、社外秘の情報を競合他社に持ち出されてしまったり、横領事件を起こされたりすることも考えられます。
このような場合には、速やかに雇用関係を解消することをおすすめします。
会社の経営が行き詰まってしまったときには、業務の効率化や会社の利益につながらない従業員には辞めてもらった方が良いケースも考えられます。
会社としてもこれ以上従業員を雇用し続ける余力がないのなら、従業員に辞めてもらうのがベターでしょう。
退職勧奨は、あくまで対象の従業員に働きかけて自主的に退職してもらうものです。そのため、一方的に解雇を告げるよりもトラブルになりにくく、法的なリスクが小さいメリットがあります。
従業員に解雇を一方的に告げると、相手が態度を硬化させてしまいかねません。その場合、退職に応じなかったり弁護士を雇って徹底抗戦してきたりすることもありえます。
一方、退職勧奨なら話し合いに応じてくれる可能性が高いので、リスクをなるべく減らして穏便に辞めてもらいたい場合に行いやすいです。
退職勧奨で退職すると会社都合の退職になるので、従業員にとっては失業保険・失業手当をもらいやすくなるメリットがあります。
自主退職だと失業保険はすぐにはもらえませんが、会社都合なら申請が受理されればすぐに支給されます。そのため従業員からすると、当面の生活に困らないという大きなメリットがあるのです。
退職勧奨を行うための法律上の条件などはなく、退職勧奨は違法ではありません。ただし、やり方によっては訴訟につながる場合があるため、注意が必要です。例えば、対象の従業員と合意を目指さず強引に退職を促してしまうような行為はリスキーです。
次の項目では、退職勧奨を行う際の注意点についてご説明します。退職勧奨を行う際には、事前に確認しておきましょう。「
退職勧奨をする際には、「退職届を出さなければ解雇するぞ」と言ってはいけません。それでは、解雇と変わらなくなってしまいます。
実際「昭和電線電纜事件」という判例では、企業側が退職届を出さないと解雇する旨を従業員に告げたことが原因で裁判に発展しました。このようなケースもありえるため、「退職届を出さなければ解雇」という発言はしない方が良いでしょう。
退職を促すため、膨大な量の仕事を与えたり逆に仕事を一切与えなかったりするなどの対応をしてはいけません。また合理性に欠ける配置転換もリスキーです。
このようなケースでも裁判で争った事例が多数存在します。
まず社内で対象の従業員について調査して、退職勧奨すべきかどうか検討します。退職勧奨することが決まったならば、退職勧奨の根拠となる従業員の行動や態度に関する情報を集めましょう。
例えば勤務態度が悪い場合は、無断欠勤や遅刻の証拠となるタイムカードや社内システムへのログイン記録、同僚や上司取引先からの証言などを収集しましょう。これらの証拠や証言をできるだけ集め、理由をまとめておきましょう。
個室に対象の従業員を呼び出し、退職勧奨通知書・合意書を渡して内容を説明し、退職してほしい意向を伝えます。あくまで会社側の希望を伝えるスタンスですので、相手に強要してはいけません。
そして回答期限を伝え、それまでに返事をしてもらいます。強引に回答を促す行為はトラブルの元なので避けましょう。
本記事では、退職勧奨とは何か、具体的なケースやメリット、手続きの流れについて解説しました。
企業、従業員の双方にメリットのある退職勧奨ですが、進め方を誤ると不要なトラブルを
招くことにもなります。
入念な事前準備と丁寧な対応で、穏便に円満に進めましょう。